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社員が安心して長く働ける会社と、
女性が長く働ける環境づくりを

照屋 美記

力の源ホールディングス

制度・労務グループ

手に職を持つために医療事務の資格を取得

佐賀県小城氏芦刈町、有明海を望む地に照屋は育った。実家は海苔の養殖と農業を営んでいた。上質な海苔は1枚100円の高値がつき、100円のお菓子が買える……子供の頃そんな思いを抱いた。
高校を出ると西南大学商学部に進む。就職環境は厳しかったが、旅行が好きだったこともあり添乗員を希望して西鉄旅行に就職する。しかし希望は叶わず、配属された部署は東区を担当する営業部。法人客に航空券やJRのチケットを販売してデリバリーする仕事を担当した。
2年10ヶ月ほど勤務したのち結婚退社し、男の子を出産して主婦の生活に入る。夫は沖縄出身で西南大学のゼミの1年先輩。義父は裁判官の仕事を勤め上げ、現在は故郷にもどり那覇市で余生を楽しんでいるそうだ。
2人目は女の子、子育てに専念しつつも貯蓄が徐々に目減りしてゆくことに不安を覚え、手に職を持とうと決意して医療事務の資格を取得する。
そして2003年に医療事務の会社に勤務、その後別府の産婦人科に転職、さらに南区に新しく出来た産婦人科、百道の国立病院九州医療センター、皮膚科の受付と専門知識を生かして仕事の場を移ってゆく。

どこの企業にも必要とされる仕事を得るために社労士の資格を取得

しかしながら、医療事務の給与水準は低く仕事の将来性も見えなかったため、新たな職を求めようと決意する。そして、企業に必ず必要とされる仕事を考えた結果、社会保険労務士の資格に挑戦する。
2008年10月から資格の学校TACに通い、2009年8月に7.6%という狭き門を突破して合格する。参考ではあるが、昨年の社会保険労務士の合格率は2%台だったという。かなりの難関である。
社労士の勉強をしていた頃、下の娘は当時小学校1年生。全然遊んでくれず寂しかったとこぼしていたそうだ。娘が不満をもらすほど、ほぼ1年間にわたり照屋は資格を目指して勉強に集中していたのである。
そして社労士の資格を得た照屋は、求人広告を見て力の源にアルバイトとして仕事に就くことになる。給与計算を主な業務とした、労務関係の専門職としての再出発であった。

社員が安心して長く働ける会社へ

労務の仕事を通して感じることを照屋は語る。
「飲食業は労務環境の課題がニュースとして取り上げられることが多々あり、人が集まりにくい状況にあります。負のスパイラルとも言えます。力の源もここ数年、社員数はさほど変わってはいません。それに反してアルバイトさんが急激に増えています。私が入社した当時は1,500名程度でしたが、現在はおよそ2,500名在籍しています。それだけ社員の負担も増えていると思われます。アルバイトさんに対しても、社員になったら得られるメリットを分かりやすく提示できていないようです。やはり、『人が集まる会社』+『人が安心して長く働ける会社』を、私たちは作ってゆかなくてはなりません」。
このような状況は照屋の部署でも起こっている。採用に力を入れなければならないため、後詰めとなる労務は照屋と大坪の2人体制である。あと一人いれば、第二領域の仕事を仕組み化して、第一・第三領域の仕事を減らせるという。それを二人で行えるか、照屋の挑戦は続いてゆく。
帰社時間は平均すると8時、家族4人が揃って夕食を取れるのは月に5回程度という。みんなで役割を分担して家族という船を漕いでいる。今はただ、子供たちが自立するときを目指して日々櫓を漕ぐことで精一杯である。それもまた楽しいことではあるという。

女性が長く働ける環境づくりを

社員が安心して長く働ける会社にするためには何が必要か?と問うと、照屋は次のように述べる。
「2つの取り組みが必要と思われます。一つは、法定福利の充実です。今までは若い社員が多かったですが、近年は家庭を持つ人が増えてきています。一般の会社と同じような社員構成になってきています。ですから、休暇、手当(住宅・家族)といった分かりやすい制度の充実が求められます。社員株主会の充実は大きなメリットでしょう。
もう一つは、特に女性が働きやすい環境づくりです。結婚して出産して、再度戻って働く事ができる仕組みと制度づくりに取り組みたいですね。矢部(ゆいか)さんがモデルケースでしょう。エリア限定の契約社員制度もその一例といえます。女性にとって働きやすい環境づくりとともに、女性社員の比率を高めることにより、会社の労務環境も改善できると思います。女性の方が仕事を続けていく上でのハンディが高いですから。」
また、照屋は力の源と自分について相性が良いと語る。
「私は声が大きいんです。電話も顔から離して使っています。そんな気さくなところは力の源に合っていると思います。病院にいたころは、気を使っていたこともありましたから」。なるほど照屋らしい一面である。

力の源の魅力は、変わり続けていること

力の源に入社した当時、照屋は“あたたかい会社”だと感じたという。その風土は今も変わることはない。そして、困ったときに頼ってもらえることにやりがいを感じるという。
照屋は原明宏が行っていた店長研修に講師として参加した経験がある。そのとき、お店における労務管理について講義を行った。その経験は今も心に息づいている。社労士の仕事は、事務処理で済むことも多々ある。そんな中で、人の顔が見える仕事…その人のサポートが出来ることが楽しいという。
「労務管理の仕事は、土台となる基礎がしっかりしてなくてはなりません。その部分は死守します。その上に、啓蒙活動とともに未来に向けた制度づくりを行ってゆきたいですね。力の源の理念は“変わらないために、変わり続ける”です。その実践に労務の分野でチャレンジしたいですね。」
力の源は常に変化している組織である。ひとつの場所に留まってはいない。2010年に入社してから今まで、ずっと会社の成長を実感しているという。会社が大きくなるにしたがって、社会から求められるものも変わってきている。一飲食企業から、飲食企業をリードする企業へと期待されているのである。
当然、社員に求められるものも変化している。成長を求められているのである。
「自分もいっしょに成長している実感があります。」と照屋は語る。 自ら資格にチャレンジしながら人生を切り拓いてきたように、力の源グループの労務管理の在り方を変革して、新たな貢献を果たしたいと模索している。