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「ありがとう」の意味を体現したときから、
自信とともにやるべきことが見えてきた。

中野 凌

一風堂大名本店

お客様からの「ありがとう」で扉が開いた

中野凌は小学校に上がると『筑紫野リトルホークス』という野球クラブに入った。それから高校を卒業するまでずっと白球を追い続けた。
小学生のときはキャッチャー、中学・高校ではショートを守った。武蔵台高校時代は並みいる強豪と競いつつ県のベスト8に入っている。
福岡大学に入学すると、1年生のときから一風堂西通り店でアルバイトを始める。コミュニケーションをとるのが苦手な中野は、スタッフと目を合わせることができない。仕事に自信が持てずいつも下を向いていた。「おはようございます」の一言が言えないのだ。
そんなとき、たくさんの荷物を抱えたお客様が見えられた。中野は自分にできることはないかと考え、荷物かごを2つ用意して「こちらの席も使ってください」と声をかけた。おそらく旅行帰りのお客様なのだろう。そのとき『ありがとう』の言葉が笑顔とともに返ってきた。
中野はハッとした。そして胸が熱くなった。
「そのとき、『ありがとう』の意味が初めて分かりました。今までとはまったく違った感動が体の中から湧き出してきました。そして、スタッフに、ありがとうの意味を伝えてゆくことが自分の仕事だと感じました」。
中野が大切な何かを発見した瞬間だった。

かっこいい先輩たちがいたから、力の源を希望した

大学を卒業するとリノベーションの会社に就職するが、理不尽な上司と衝突して4ヶ月で退職する。そして一風堂西通り店に戻ることにした。そんな中野をスタッフたちはあたたかく迎えてくれた。
そして西通り店が一時閉店となったとき、中野は社員試験を受けることにした。
「銀行員の父は商社系の会社を希望していたようで、飲食業への就職には抵抗感があったようです。そんな父の意見を押し切り力の源への就職を選択しました」。
なんで力の源を希望したのか、その魅力について中野は語る。
「一番は、カッコいい先輩たちがいたからで、自分もそんな先輩のようになれたらと思ったからです。身近には山下元さん、白石亮さん、今の上司の齋藤潤哉さんがいます。山下さんは冷静にものごとを見つめる目を持ち、原理原則を大切にされています。一つのぶれない軸を持っています。白石さんは、周りとのコミュニケーションが上手ですね。そして熱く早く、手際が抜群です。齋藤さんは、やっていること全てが教えに繋がっています。背中で語る人ですね。一人のお客様と一杯のラーメンを常に実践しています。3人とも、ラーメンに対するこだわりと情熱が半端ではないですね」。
中野は信頼できる先輩たちから、さまざまな気づきと学びを得てきた。それを後輩に伝えたいという。
「力の源は『ありがとう』を大切にしています。それを体現できる職場です。『ありがとう』の意味を感じたときから、自分の人生の新たな扉が開いたと感じています。後輩たちにもそのような気づきと学びを体験してもらいたい、それが自分の使命だと確信しています」。
中野は現在、一つの目標として、1日5回お客様から『ありがとう』をいただくことを掲げている。そのために、お客様がいらっしゃったら自分からドアを開けに行く、お薬の必要な方にはお水を差し上げる、家族連れのお客様にはおしぼりを出すなど、具体的な指導をしている。そして、フィードバックを重ねながら、スタッフとともに仕事の楽しみを増やしてゆく取り組みを日々続けている。
「これからは齋藤店長の背中を見ながら、仕事の楽しさを共有できるスタッフを育ててゆきます。店長になったら、そのようなスタッフとともにお客様の満足度を高めながら、数値管理を徹底しながら繁盛店を作ってゆきます」。
頼もしい答えが返ってきた。

両親への感謝の気持ちが湧いてきた

力の源に入社してから、両親への感謝の気持ちが芽生えてきたと中野は語る。
「両親に『ありがとう』を言えるようになりました。一番は生んでくれてありがとう、そして育ててくれてありがとう。さらに、ごはんをいただくとき、お風呂あがりに、駅まで送ってくれて…『ありがとう』。いままで当たり前だと思っていたことが、実は当たり前のことではありませんでした。父はお酒を交わしたとき、『最近ありがとうの回数が増えたな』と言っていました。最初は反対していましたが、いい仕事、いい会社に入ったと認めてくれているようです」。
西通り店一時閉店前の最終日、家族で来てくれたことを中野はとても感謝している。父は大名本店にも来てくれて「美味しかった」と言ってくれた。
大切なことは日々の暮しの中にある、日々の仕事に中にある。そのことに気がついた中野凌。これからの成長が楽しみである。